を取った主人を無いがしろにして何でも彼んでもお関の命のままに事の運ばれて行く山田の家庭はごった返しに乱れて居て口汚い罵りや、下等な憤りが日に幾度となく繰返されて居る中で、突きあげられたり突き落されたりして居るお久美さんの苦しさは到底その上手くもとらない口で云い現わす事などの出来るものじゃあない事はよくよく※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子も知って居た。
 お久美さんはお関に取ってたった一人しか無かった妹の娘なのだけれ共病的な心は真直に可愛がる事をさせないで、年と共にお久美さんが娘々して来るにつれて段々と激しい虐め方をした。
 お久美さんも其れを知って居た。
 ※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子もそれをさとって居た。
 けれ共時の力を押える訳には行かなかったのである。

        四

 お久美さんと約束の日が来た。
 ※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は朝から何となし落ち付けない気持でカタカタと机の上を片づけたりして居たが、お昼を仕舞うと先[#「先」に「(ママ)」の注記]ぐ、髪を一寸撫でつけるなり飛ぶ様にして家を出て行っ
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