#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子なので、地肌にピッタリ張り附いた様な重い羽根にも「烏の濡羽」などと云う美的な感じは一寸も起らないで只、死人と烏はつきもので、死ぬ者の近親には如何程鳴き立てても聞えるものではないなどと云う凄い様な話し許りを思い浮べて居た。
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「一体烏という鳥は決して明るい感じのものではないが」
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と思って居ると、凝り固まった様にして居た烏はいきなり、もう仰天する様な羽叩きをして飛び出した。
四辺が眠って居る様なので、バサ、バサ、バサと云うその音は途徹もなく大きく響いた。
※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は、急に引きしまった顔になりながら、何故あんなに急に飛び立ったのかと少し延び上って外をすかして見ると思い掛けず隅の雨落ちの所に洋傘を半つぼめにしたお久美さんが立って居た。
※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は息が窒る様になって仕舞って、強《こわば》りついた様に口も利けなくなった。
弾かれた様に立ち上って、此方を凝と見て居るお久美さんを見返したまま、稍々《やや》暫
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