くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]さん、
私もう他所へ出ようかと思って居るのよ、此頃。
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と口を切った。
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「どうして?
「もう彼の家が厭で厭でたまらないんですもの、
ほんとに居たたまれないわ、私。
「そんななの、
だって、今まで彼那に長い間貴女堪えて来たんじゃあないの。
「だって、この頃は余計そうなのよ。
私もうほんとにいや。
「だっても家を出るって、どうするの。
「どっかへ奉公にでも行く事よ。
もうその方がどい丈好いか知れないわ。
つまらないんですもの、斯うして居たってね。
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※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子はお久美さんの打ち明けかねて居る気持を大方は察しる事が出来たけれ共、どれ程の思い違いと混惑が起って居るのかは知る事が出来なかったので、到々思い切ってお久美さんの気を引くために、
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「貴方の所へ今度来た方ね、
どんな人。
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と云って見た。
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「重三さん?
「ええ。
「私、分らないわ。
「そんな事あ
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