を見合わせて、
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「ホラね、きっとそうだと思った。
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と無言の中で云い合った二人は厭な顔をしてそっ方を向いて仕舞った。
お関は尚憎体な笑をたたえて、
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「ねえ※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子さん、東京じゃあ今、
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と執念く云うので、かくし切れない程気をいら立たせた※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子はそれでも声だけは静かに云った。
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「さあ、どんなんでしょう。
皆各々自分のすきなのを着てるんだから一寸口じゃあ云えないでしょう。
それにそんなに私は気をつけても居ません――
「そうですか。
そいじゃあ何でしょう、貴女なんかハイカラさんなんだからどこからどこまで流行りずくめで居らっしゃるんでしょうねえ。
そんな髪が流行るんですか。
何て云う名なんでしょうね。
珍らしい頭ですねえ。
「私みたいなおちびに似合う流行はどこにもないでしょう。
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と戯談の様に云いは云っても、※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は腹立たしい気にならずには居られなかった。
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「なあにそんな事あるもんですか。結構ですよ、女は、あんまり大きいと腰から下がしまりがなくっていやなものですよね。
去年から見るとどれ位いいお嬢さんにおなんなすったか知れませんよねえお祖母様さぞお楽しみでしょうねえ。
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部屋の隅の方で帳面をつけて居た恭吉と云う洗濯男だの蠅入らずの前で何かごとごとして居た小女などは、田舎人の罪のない無作法と無遠慮でわざわざ頭をあげて※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子の方を見て居た。
お久美さんはだまって頭を下げて膝の所に浮いて居る白い布を集めたり手にのばしたりしながらお関に気兼をしいしい、折々※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子の眼をのぞき込んでは気の毒そうな――自分も※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子も――顔をして居た。
※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子はお久美さんと話したいと云う願望で胸がかたくなる様であったけれ共、仮りにも自分よりは一段下に居るべき者だと思っ
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