て黙ってあげるけれど、こんなに延ばし延ばしして一度も顔も持って来ないのはひどいってね。
一体|彼方《あちら》は返すつもりで居るんでしょうか。
「そりゃ貴女、勿論拝借したものですもの、
お返し仕様とは思って居ましょうよ。
「そうでしょうかねえ、
そんならどうでも好い様な事だけれ共一度位云いわけに来そうなもんだけれ共……
何か上手《うま》い方法はないでしょうかねえ、
ほんとに困って仕舞う。
「そうですねえ。
兎に角あれ丈のお金なんですから。
でもまあ家で一生懸命物にする積りでやって居るのですし致しますから、あんまり外から口をお入れなさらない方がようございましょうよ。
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※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子の心にはフッと或る事が浮んだ。
そして鋭く聞いた。
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「何故?
「いいえ、何故って、
何故って事もありませんですけれどね。
あんまり彼方此方から云われると却って変に出てなかなか出さない人が有りますですから。
「そうかも知れませんね。
けれどあんまりはかどらないから丁度町に知った弁護士が居るから其の人に口を利いてもらいたいって云う事も云って居るんですけれど。
「さあ、それはどうでしょうかね、
私なんかには分りませんけれど、それ程にする事はありますまいと思いますよ。
まあ弁護士と云えば公になり勝ちでございますもん、事を荒だてて見た所でさほどの功も有りませんでしょうよ。
まあ勝手な事を申しますが、当分は家にお委せなすって居らしってようございましょう。
どうにかなりましょうから。
「そうですね。
そいじゃあ山田さんがお帰りなすったらよくお話しなすっといて下さいまし。
御いそがしいでしょうが、どうぞよろしくお願い申しますってね。
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※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は帰る道々、どうしても、彼方からは金は返ったのだけれ共山田の家で消えて仕舞った様な気がしてたまらなかった。
他の人に口を利かせるなとか、事を荒だてるには及ばないとか云うのは、只此方の為にばかりではない様な気もした。
第一金に饑えて居る様な人にこんな事をたのむのは、此方からそうする様に仕向ける様なものだ。
お祖母様もあんまり不用心すぎる。
そうなってからああ斯う云ったっ
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