面白く見守って居た。
いつも此の位晴れ晴れと美くしくあって欲しいとさえ思われた。
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「ほんとにまあ、貴女も辛いわねえ、
あんな人の傍に居るんだから。
何か好い事が無いでしょうかねえ。
「ええ、ほんとよ。
伯母さんさえ人並で居て呉れたらと思う事よ。
伯父さんは変だけれ共彼那じゃあないもの。
でも此頃はほんとに好いわ、私。
[#ここで字下げ終わり]
最後の一句をお久美さんは何とも云えない細く優しい声で心から云って、こみあげて来る感情を押えるに力の足りない様に膝をムズムズ動かしたり下を向いて後れ毛を丁寧に耳のわきに掻き上げたりした。
※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は何だか心に陰が差して来る様な気持になって、
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「何がそんなに好いの、此の頃。
私にも半分位分けても好いでしょう。
貴女みたいに嬉しそうな事はちっとも私には来ないんだから。
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と云って淋しく微笑んだ。
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「まあ。
何でもないのよ。
第一私そんなに嬉しがってやしないわ。
「そう。
それはそうと彼の人達は何のために今頃行ったの。
暑いのに大変でしょうねえ。
「養子に成る人を迎えに行ったのよ。
「え?
養子。
まあ養子なんかするの、彼那家だのに。
「まあ、可哀そうに、
いくらあんな家だって貧亡[#「亡」に「(ママ)」の注記]ながら後取りは入用《い》るわ。
「へえ。
私始めて聞いた。一体いつから出て居たの、其那話。
「いつからも何も有りはしないわ、
昨日の晩始めて私聞いたんですもの。
「そいで、今日もう迎に行くの。
まあ何て突拍子もない家なんでしょう。
養子なんて云う大切な事をそうじきにさっさと片づけて仕舞うなんてね。
一体どんな人なの。
「私知らないわ。
「年も名も知らないの。
「ええ。
私に聞かせないんですもの。
「だって、まあ、あんまりじゃあ有りませんか。
まあ、それにしても変ですねえ、
そうじきに養子に丁度好い人が見付かるなんて。
第一、先の人は彼の家がどんな家でどんな人が集まって居るんだか知って居るんでしょうか。
知って居ちゃあ来る者がなさそうだけれど。
「ほんとにね。
だけれ共、矢っ張り縁が有るんでしょう。
[#ここで字下げ終わり]
お久美
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