さんは何を思ったのかポーッと顔を赤くして羞《はにか》む様に微笑するのを見て※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は何も彼もすっかり分った様な気がして薄笑いをしながら頭を左右に揺り動かして、苦労をしながらも単純な女らしい夢心地に支配されて居るお久美さんの可愛らしい霊を想って居た。
来るべき歓びを期待して居る成熟した体の隅々に普く行き渡って居る柔和と謙譲と恥らいを見出すと※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は殆ど痛ましい様な気持になって仕舞った。
未知の若者を自分の王者とも君主とも想像して居るお久美さんは此の力強い夏の日をどれ位幸福に感じて浴して居るのだか知れない。
幾日かの後、自分の前に展らかれる永劫の花園の微な薫香を吹き渡る風に感じて居るのに違いない。
年若い娘の中に在って、自己の征服者を待ち焦れて居る彼女等の願望の強さ、強者の前に身も心も捧げ様とする若い霊の焔に驚かされもし悲しまされても居る※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は、不幸に不幸の続いた十九年の年月を暗く送ったお久美さんが不意に現われ様として居る若者に対して自分の幸福な世界の開拓者で有ると思うのは決して無理では無い。
其れが事実と成って開展され得る事なら※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は共に微笑もし夢見る様な歓びを分つ事も出来様。
けれ共決してそうは成らない事とは※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子に明かに分って居た。
お関の病的な心は、若しお久美さんが当然その位置に有ってもその頭に新婦の環飾りをのせさせるものではない。
輝いたお久美さんの体、押え切れない力で差し上って来るおだやかな微笑を※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は、寒い様に悲しい気持で見て居た。
いずれは見なければならない悲しみの極みまで無心で居るお久美さんを歩ませて行くのは忍び難い事で有ったけれ共、又今切角お久美さんの心の前に美くしく現われて居る蜃気楼を自分の一言で打ち崩す事も出来なかった。
若しかするとと云う偶然を頼んで※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は到々一言もお久美さんの心に立ち入った事を云わずに仕舞った。
年若い娘の羞恥から自分のときめいて居る心を、小躍りして歌って居る思いを「何
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