いのちのある智慧
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
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(例)[#地付き]〔一九四七年一月〕
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人類の祖先たちは、彼らの原始的な生活のもとで、どんなふうに自分たちの発見と智慧とをもちいてきたのだろう。
太古の人類の希望は、幸福に生きたいという単一の強烈な欲求であった。それらの人々は、自分たちに一本の棒の切れはしを研究させ、その先をとがらせ、手にもちいいように小型のものとし、さらにそれにめどをつけて、からだにかぶる皮と皮とをつぎ合わせるに便利な道具に発展させてゆくそのあくことない興味を、幸福に生きようとする人間の願いなどという言葉で表現することさえもしらなかった。しかし人間の幸福と、それに役立つ力こそ智慧であり知識である。そのたがいの関係をもっと自然に、したがって人間らしく扱ってきたのであった。
人類の伝説には、天から火を盗んで人間生活にもたらしたプロメシウスの物語がある。山林の自然発火から学んで、めいめいの小舎の炉ばたにまでもちきたされるようになった火というもの、文明の源泉を人間が掌握したおどろきとよ
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