とうお終いに勝ったのは、芳子さんの親切、よい心掛でした。
 二年目の終業式がすんだ日、お家に帰ると政子さんは袴をはいたまま、芳子さんのお部屋に来ました。(友子さんは二年丈すると、もう学校は廃めてしまったのです。)
 そして芳子さんの前に坐ると、心から、
「芳子さん、どうぞ勘弁して頂戴」と申しました。
 学校で戴いた修業証書を見ていた芳子さんは、其の言葉と一緒に顔を上げました。
「真個に――御免なさい、芳子さん、私、今まで沢山貴女にすまない事をしてしまったわね、真個に悪かったと思うの、友子さんが……。」
「よくってよ、よくってよ政子さん、私何とも思やしないわ、只ね、貴女が、私の思っている事さえ知っていて下されば、もうそれだけでいいの」
 芳子さんには、これだけ政子さんが思っている事が、すっかり手に取るように分りました。
「私共は矢張り仲よしなのよ政子さん」
 二人は知らないうちに、眼一杯に涙をためながら、楽しく仕合せな心に成って微笑み合いました。
 まあ、真個にお互によく解り合って、よいところを信じ合った時ほど、人の心が晴々と空のように成ることはありませんでしょう。
 政子さんと芳子さん
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