たのである。
戦争の年々は、私たちすべてに、苛烈な教訓を与えた。個々の作家の才能だけきりはなしてどんなに評価しても、全般にこうむる文化暴圧に対抗するにはなんの力でもなかったことを、まず学んだ。それにつけても、文筆の活動で生計を立ててゆかなければならない私たちの必要は、食うためにはそれもしかたがない、という過去、あるいは現在の諸条件を、生存するばかりか人生のための仕事なのだからこそ、ここまで高まらなくてはならないと社会的に主張し、努力してゆくのが、私たち作家の任務であると知らしてきていると思う。
作家一人一人の仕事ぶりについてみれば、文学の創造過程の独自さから、それはめいめいのやりかた、めいめいの住居での仕事場というふうに、別々に行われる。この事情は、それだから作家や評論家は、社会的本質がバラバラなものだという理由にはならない。そういう個々の具体的状態において、一貫性をもっているのである。
民主的な社会生活の確保ということがいわれ、文学の民主性ということが話されるとき、とかく、題材の方へばかり目がくばられる。あるいは、文学をとおして大衆との結合というふうに相対の形態を考える。しかし
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