、作家たちが社会機構の中で保守封建なものとたたかいながら、営利資本の圧力に抗しつつ自身とその芸術を新しくし、なおさらに新しい作家と文学とをもりたててゆこうと欲するとき、自分たちの文学活動の自立性を、民主の立場にたって、経済的に政治的に守る力さえもたないで、どうして遠大な希望にふさわしい実力をもちえよう。これまでにも、民主の方向をもつ文学団体というものは出来ている。それだけでは、まだ盾の半面が欠けている。文学が、社会の文化生産の労作であるという本質を理解して、作家たちが、他の文化関係の全勤労者の組合と連繋をもつ、著作者としての組合をもつなら、作家の社会的にあらわしうる能力は「文士」の域から必ず脱しうるであろう。日本の自覚あるすべての勤労者が、歴史のうちに描きだす自分たちの人生を大切に思い、自分たちの生命の価値を表現する職務を愛し、自分とすべての人々のために力ある組織をもちはじめているいま、人生を感受することの最も鋭いはずの作家たちが、自分たちも組合をもとうと希望するのは、ふしぎのないことである。
 日本の将来には、幸にしてもう二度とふたたび治安維持法は出現しないだろう。軍人どもが文化を殲
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