あとがき(『幸福について』)
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)遷《うつ》って
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]〔一九四七年十一月〕
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私たち日本の女性が今日めいめいの生活にもっている理想と現実とは非常に複雑な形で互に矛盾しからみあっている。しかもその矛盾や葛藤の間から、私たちの二度とくりかえすことのない人生の一日一日が生み出され、歴史は発展しつつある。
今日すべての人々が困難に感じていることは何だろう。それは現実があまり切迫して、早い速力で遷《うつ》って行くから、一つの行動の必要が起ったとき、その意味や価値をじっくり自分になっとく出来るまで考えているゆとりがなくて、ともかく眼の前の必要を満たすように動かなければならないということではないだろうか。あらゆる現象が私たちに考えることを要求している。それだのに、そのあらゆる現象そのものの流れの早さが、逆に私たちに考えるべき時間さえあたえない。
こういう現実の激しい流れと、生活の流れが、無意味なものではなくて、はっきりと歴史をすすめるものであること
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