人民のリアリスティックな発展の可能性とそのための多種多様な行為とともにあってはじめて見出されるのである、と。この場合、国際的なプロレタリア文学運動が、二十世紀の世界文学の一発展としてもたらした文学の社会性、階級性についての諸観点、および作品の芸術的実感と歴史に対する客観的認識力との微妙な生きた関係の探求などは、民主的な文学の精髄をなす。なぜなら民主的な芸術感覚はそのものにおいて、進歩的な人々の生活感覚全体が保守の精神に生きるもののそれとはまるでちがったものであるとおりに、旧い文学感情とはちがうのであるから。
歴史はその仮借なさで「伸子」を永年にわたって変化させ、前進させた。「二つの庭」「道標」及びこれからかきつづけられてゆくいくつかの続篇をとおして、「伸子」のうちに稚くひびいている主題は追求され展開されてゆくであろう。
伸子一人の問題としてではなく、この四分の一世紀間に、日本の進歩的な精神が当面しなければならなかった多難な歴史の課題にふれながら。「伸子」と「二つの庭」との間に二十数年がけみされた事情の一つは、作者の成長のひまのかかったテムポである。もう一つは、日本には丁度二十二年間
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