あとがき(『宮本百合子選集』第六巻)
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

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(例)[#地付き]〔一九四八年十二月〕
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「伸子」は一九二四年より一九二六年の間に執筆され、六七十枚から百枚ぐらいずつに章をくぎって、それぞれの題のもとに二三ヵ月おきに雑誌『改造』に発表された。たとえば、第一の部分「揺れる樹々」につづいて「聴きわけられぬ跫音」そのほか「崖の上」「白霧」「蘇芳の花」「苔」などという小題をもって。
 当時日本にはもう初期の無産階級運動が盛であったし、無産階級の芸術運動もおこっていた。解放運動の全線にわたって、アナーキズムとコンムニズムとの区別が明確にされていない時代であった。プロレタリアートが、歴史の推進力となる階級であることは主張されていたが、進歩的な小市民・インテリゲンツィアが革命の道ゆきにどのような位置と使命とをもっているかということについて、まだ科学的な判断が生活と文学との具体的なありかたではっきりさせられていない時期であった。無産者芸術運動、その文学の分野では、自然発生的に宮嶋資夫、葉山嘉樹、
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