あとがき(『宮本百合子選集』第二巻)
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)木片《こぱ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)おはぐろ[#「おはぐろ」に傍点]をつけていた。
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この第二巻には、わたしとしてほんとうに思いがけない作品がおさめられた。それは二百枚ばかりの小説「古き小画」が見つかったことである。
一九二二年の春のころ、わたしは青山の石屋の横丁をはいった横通りの竹垣のある平べったいトタン屋根の家に住んでいた。ある日、その家の古びた客間へスカンジナヴィア文学の翻訳家である宮原晃一郎さんが訪ねて来られた。そして、北海道の小樽新聞へつづきものの小説を書かないかとすすめられた。
新聞の小説というものには、一定の通念がある。一回ごとにヤマがなければいけないとか、文章の上に一種のひっぱる力が要求されるとか。わたしにはとてもそういう条件がみたせないと思った。それで、そのときは、ことわってお貰いするように宮原さんにたのんだ。新聞に書いてみたいと思う題材もなかった。その時分、わたしは、「伸子」の中に佃としてかかれているひ
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