時分「煉瓦女工」の作者は、わたしの書いたその文章はおそらく読まなかったことだろう。その後野沢富美子さんは、さまざま生活の波瀾に苦しい経験を重ねた末、一九四五年(昭和二十年十二月)共産党に入党した。それから結婚した。党員小池富美子として発表された「女子共産党員の手記」は、まだ多分に、この作者が幼時の環境からしみこまされていたアナーキスティックな爆発があった。しかし、少女時代の労働のために健康を失ったこの作者が、妻、母として、党員として東北の小さい町に負担の多い生活とたたかいながら一つ一つ作品を重ねて来ているうちに、次第に爆発的な悲憤と反抗とが、階級的な作家としてのリアリスティックな能力に高められつつある。
アグネス・スメドレーはアメリカの下層生活から育って来た革命的ジャーナリストである。彼女の「女一人大地をゆく」に溢れているつよい生活力は、彼女の政治的な成長とともに、そのアナーキスティックな要素を力づよく人民の発展的な歴史性に統一させた。今後の小池富美子の成長の道については、階級的婦人、人民的な作家として注目すべきものがある。アナーキスト出身で著名な婦人作家で、その才能の素質と妻として
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