が、日本よりも早く実現されつつある社会として、ソヴェト社会に対する関心は現実的に深まっている。第九巻に集められたソヴェト報告は主として文化、文学問題にふれている。これらの報告は、こんにちのソヴェト作家としてシーモノフの名と作品を知っている日本の人々に、シーモノフが工場の文学サークルから文学的誕生をしてのびて来るそれ以前の時期において、ソヴェト社会は、その勤労人民の日常生活にどんな文化、文学の開花の可能性を準備していたかという実際を知らせる役に立つ。一九二九年に、ソヴェトの文学サークルは何をしていたか、どういう活動の方向をとっていたかということは、こんにち日本の民主的な文学運動として発生している全国数百の文学サークルの成長にとって、いくつかの参考になる点を示している。労農通信員《ラブセルコル》の問題も、現在の日本の民主的文化運動の中では、その重要性が十分理解されていない。日本の民主的な文化、文学運動をより発展させるために有益なモメントがいくつか発見されるという意味からも、こんにち、これらのソヴェト報告は生々とした価値をもっている。
 これらの報告の書かれた一九三一年から三二年ごろ、日本の
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