『暦』とその作者
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)強《あなが》ち
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]〔一九四一年二月〕
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壺井栄さんの「大根の葉」という小説が書きあげられたのは昭和十三年の九月で、それが『文芸』に発表されたのは十四年の早春のことであったと思う。それから後に書いた「暦」と他の短篇とを合わせて『暦』という短篇集が出たのは去年の三月である。
「大根の葉」を発表してから壺井さんが一人の婦人作家として持っている特色はすぐ一般に理解され、親愛のこころをもって迎えられて今日に至っている。今度新潮賞をうけることになったことや、それにつれてまた新しく『暦』の書評が書かれたりすることについて、壺井さんはどんな感想をもつだろうか。少し極りのわるい顔つきになって、何だか妙ねえ、というだろう。そして、心の中で、貰う賞金をいろんな子供や大人や友人たちのためによろこびとなるような使いかたを考えるだろう。
壺井さんのそういう人柄は『暦』一巻のあらゆる作品の中に溢れていて、どんな読者もその人柄に感じる平明な温い
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