キ哉時キタレバ
忽チニ再ビ瘡痍ヨリ芽フキテ
ソノ傾ケル紅ハ茎ナガク
イトハルカナル方ニムカフ(白昼)
くさんちっぺもかわいそう
にんじんの母親もかわいそう
トルストイ夫人も自分のよう
まして私はかわいそう
これでは気のきいた批評などはかけず
たゞどもるばかり(冬)
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けれども、「草に寄す」「夏」「落差に就いて」「わが肉は新陳代謝はげしく」などにもり上りほとばしる感情の勁靭さ、豊富さと清潔さとには、気持よい水しぶきで顔をうたれるような悦びがある。
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私は凍らず天をみない
落差ます/\はげしく一樹なく
人工の浪漫なくおもむきなく
世の規定を知らずとび落ちよう
おのが飛沫の中にかゞやき落ちよう(中略)
おゝ詩はやわらかい言葉のためにあるのではない
わがうたは社交と虚礼のために奏でざれ
あかつきの大気をくぐりぬけ
美しい霜のおくように
そんなに私はわが詩を貴方の胸におくりたい
[#ここで字下げ終わり]
面白いことだと思う。むかし話に漁師伯龍とその妻となった三保の松原の天女の物語があって、それを大正の時代に菊池寛が「羽衣」という短篇に書い
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