をもつものとして評価された。美術界の気むずかし屋、美術家連が癪にさわりながらその一言一言を気にかけずにいられない批評家のジョーゼフ・ハートさえ、彼女の作品の将来性と優れた資質とをみとめた。
 今やソーニャを失って仕事への気力も欠いているブレークは、スーザンのその成功にたいして、よろこびを共にするよりは、嫉妬をおさえることが出来ない。スーザン自身は、しかし、芸術というものの永い行く手を感じている本能から目前の成功にたいしては沈着で、ジョーゼフ・ハートが彼女の作品の二つをメトロポリタン美術館に入れたいと申出たのも、作品の本質が一つ一つきりはなせないものだということと、まだあと八つこしらえなければ完成していないことで、待って貰おうとおだやかに希望する。スーザンは、その展覧会を契機として、いろいろな人のいろいろな評言から、自分の芸術がまだ自分のつたえたいと思うものをそれなり十分観るものにつたえるだけ完成していないことをも学んだのであった。彫刻をしてゆく過程に自分が深い深いよろこびを感じているというだけでは、芸術家として自分がまだ稚いものであったことを学んだのであった。
 これらの内面的なスーザ
前へ 次へ
全19ページ中10ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング