ンの成長のあいだに、ブレークとの心持も次第に展開して、彼女は一つの結論とでもいうものに到着した。それは、人間と人間との関係は、その理解にそれぞれの限界があるということであった。マークもブレークも、マークなりに、ブレークなりにスーザンという一人の女性を見ようとした。彼女はそれぞれに求められたものを惜しみなく与えたのだけれど、この肉体と精神との天賦ゆたかな女性はマークが彼女に求めただけで全部でなかったし、さりとて、ブレークが彼女のうちに目醒めさせたものがスーザンの全部でもなかった。彼女という一つのゆたかな輪の上にマークという輪、ブレークという輪が交錯し合ったけれども、二つの環が完全に重なり合ってしまうということはなかった。男は、自分一人で彼女のすべてを充しきり独占してしまえないことが判ると、堪えがたく焦燥して彼女から去って行こうとする。
ブレークは、スーザンと暮した年月が幸福であったこと、そして多くのものを与えられたことを知っている。だが、窮極には自分というものをありのままに出して生きるつよい一個の女性としてのスーザンは、彼にとってどう扱っていいのか分らないものとなって来た。その意味から
前へ
次へ
全19ページ中11ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング