醒めさせることに興味がおかれたのであった。
女として自分のうちに開花させられた世界にひたったスーザンのある期間の生活は、クリスマスに久しぶりで田舎の生家へかえったとき非常に微妙な機会をえて一つの展開を見ることとなった。彼女の奏するピアノをきいて、スーの父親である老教授は、かすかに慄えて、自分がこれまでの生涯を浪費したことを悲歎した。その恐怖が彼女にブレークと自分との生活の実体についての疑問を目ざめさせたのであった。
スーザンは、家の附近の粗末なアパートの一室を仕事部屋として借りた。そして再び仕事にとりかかった。
ブレークの仕事の態度、傾向、それはすっかりスーザンとはちがう。スーザンが、大理石にむかってニューヨークの街に溢れる群集の中からニグロの女をとらえて彫り、北国の老婆をとらえて彫って、尨大な独特なものをつくってゆくとき、ブレークは、軽い土の塑像を、才走って、奇矯にこしらえてゆく。
スーザンが仕事に規則正しく熱中しているうちに、ブレークはロシアの舞踊家ソーニャとの恋の遊戯におちいった。それを一年の間知らなかったのはスーザンばかりであった。しかもそれを知ったのは、彼女がブレーク
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