専門技術を身につけた。けれども、職人と芸術家とをよりわける、彼女の魂の満足はフランス人の形式のうちにはなくて、スーのリアリスティックな直観のうちにあった。
どうして君は女に生れて来たんだ。その老匠は眉をひそめて口髭を一ひねりした。どうして君は女に生れて来たんだ。スーザンはこの言葉を、パリに来て初めてきいたのではなかった。何年か前、初めて彫刻の教師となったバーンスが、その仕事場で彼の肖像をこね出したスーザンの手元を見て、何と云ったろう。女、女、ああ何ということだ。これが女に生れようとは! バーンスはそう云って呻いた。
パール・バックは、地の底へまでも徹るような呻吟をもって、これらの言葉を表現しているのである。
女に生れたということは、パリでブレーク・キンネーアドと、スーザンとを再び結びあわす必然をもたらした。ブレークは、近代派の彫塑家で、きわめて富裕な大理石商の息子である。ブレークにとっては、スーザンが偉大な彫刻家であるかないかが興味ではなかった。彼がこれまで知らなかった女性としての深く大きい生命力とその素朴さ純真さが、近代的なブレークの関心をひき、スーを一人の女として自分の力で目
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