ぶり者にされたりしました。が、ロザリーは楽しく勉強をし、追々、人生に対して、はっきりした要求を持つようになりました。
 若い一人の女性として、彼女の求めたものは独立の生活と自由と、事業、いつも自分を鞭撻する目的でした。
 彼女には伯母や、美人の従姉のレティシアのように、よい結婚ばかり当にしている心持が我慢出来ませんでした。
 天性数学的な頭脳を持ち、研究心と把持力とを具えたロザリーは、自ら、事務的なことに興味を持ち出しました。
 彼女は、事務所の仕事、金融、手形の神秘的働なぞのうちに、音楽や美術に見出せると同様の亢奮とつきない興味とを覚えました。
 一生懸命で経済学原理、万国貨幣制度、憲法などを研究しました。
 学校を卒業すると、彼女は希望通りミスタ・シムコックスと云う人の秘書役として、事務所に通うことになりました。
 一週二十五|志《シリング》の月給で、ちゃんと一人前に出勤し、自分の力で下宿屋に部屋を持ち、ロザリーにとってこれは何とも云えない悦びでした。総てのことが珍しい。すべてのことが、驚異です。保険事業のこと、代理店としての仕事の性質が手に入ると、ロザリーは、持って生れた実業家の
前へ 次へ
全23ページ中9ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング