、どうも落附かなく、先生を傍にとられ、物足りません。自分からヒルダを引さらって行くのはフロラではない、フロラとヒルダにあれ程話の種となる「男」と云う者ではありませんか。
散歩も、ロザリーにとって、この感じを強めるにしか役立ちませんでした。二人の姉さんは小さい自分を放ぽり出して、気取って男のお友達と歩いたり、時には、「サ、いい子だから、あそこの角で誰も来ないか見て来てね」と立番をさせられたり。ロザリーに何よりいやなのは、散歩の間で起る斯様なことを、誰にも云ってはいけないと姉達に命令されていることでした。何故黙っていなければならないのか、ロザリーにはいくら考えてもわかりませんでしたから。
陰気な教区内でも、四人の娘達は段々人生の花盛りに向って来ました。
父親は、美しく蕾の揃ったような娘達の身の上を案じ、どうにも仕様のない教区長の貧乏生活から、広い世間に出す為、インドにいる男同胞の一人と、ロンドンにいる女同胞の一人に、一人ずつ娘を引とり世話して貰うことを頼んでやりました。
ロンドンのパウンス伯母は、すぐイボッツフィールドに自身で来、ロザリーをあずかってロンドンで修業させてやることに定
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