なるだろう」と云って、彼女を家庭生活にのみ繋《つなご》うとします。彼女は、決然とそれに対し、男が父親であるとともに自由に邪魔されず仕事を持ち続ける通り女性も母であると同時に家庭生活に煩わされず自分の仕事を継続し得るべきものと云う理想の為に、再起したのでした。
彼女は自分を来るべき女性の時代に先立つ一人の偵察者、冒険者としたのです。
数年は、又順調に過ぎました。
ところが長男のハフが十六七歳になると、続いて、悲しむべき事件が起り始めました。
ハフは、三度も落第して、父親の卒業した名誉ある学校を退学させられました。
ハリは、その時、「彼は頭はあるんだ。勿論、指導者を見つけてやることも出来る。然し、あれの持たない、そして持つことの出来ないものが、ハフに学校をやめさせるのだ」
ロザリーが「それは何ですの?」と訊いた答えにハリは、厳しい調子で、
「家庭!」と答えました。
ロザリーは、
「貴方は私共に責任があると仰云います。けれども、貴方は私共二人のお積りじゃあない、私、を云って被居るのです。何故、私ばかりが貴方より多くの責任を負わなければなりませんの? 何故、非難されるのは私ですの
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