ような家族制度、又は、男尊女卑の悪風は、時と云う偉大な裁きてが、順次に枯す根なら枯してくれます。女性の職業的困難がそれ等に関っているばかりであるなら、忍耐さえ知っていれば、自然に解決されると云っても誇張ではないでしょう。然し、私が思うに、この問題の裡には、もっと何か根本的な神秘に近いものが加っています。制度、社会的組織を創る人間の心のもう一歩奥にあるものを本能と呼ぶなら、その本能を発動させる源、深遠な自然力とも云うべきものが、見えない底の底でこの問題に働きかけているのではあるまいかと思われます。従って、人生を素直に感じ人の力も自然の力も素直に受け味って行こうとするものにとって、結論は、容易でありません。女性は、彼女自身の所謂《いわゆる》職業なるものを持ち得るや否やと云う、最も主要な疑問に対してすらも。
近代社会相の上に非常に目立つこの問題が、その影響を、教育者、社会政策家の間のみに止めて置かないのは自明です。
或る種の文学は、次第にこの分野にも視線を向けて来ました。性質として、多くの場合、この問題に対する作者自身の見地を以て作品は終結されるので、何かの形で、賛、否、の断案が下されて
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