の愛情が、斯くも不思議なものであることを知って居れば居るほど、彼女は根本的に陰鬱になって来た。彼女は、一生、此の只独りで感じ、独りで燃える愛情に苦しまなければならないのか?(十九日)
彼女は、はっきりと
自分の裡に自分を殺すものがひそんで居る!
と云うことを感じた。
自分を殺す力は、同時に自分を活かす力である。その力をはたらかせる力の強弱によって自分は生きも死にもする。そして、死と云うものも、あるときは、あまりに強く自分を誘う。
○何時も旅行にさえ出ると、きっと自分を苦しめる陰鬱さ。
今日も私は苦しい悲しい心持がして居る。すっかり自分がむき出しになって、自分の前へ来るような気がする。苦しいけれども、自分にはきっとためになるだろう。自分を凝視して行く力。グングンとさし込んで来る力をジイッと保って居る強み。そう云うものが、女には何だかうすいように思われる。今、私はかなり力のこみあげを自覚して居る。何かになろうとする力が、次第次第に膨らんで来るときの苦しさを、自分は涙と光栄とをもって、堪える。
○眠ろうとしながら、自分は種々のことを考えた。愛し合うと云うことに就いても、死と云
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