「禰宜様宮田」創作メモ
宮本百合子
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)陽炎《かげろう》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)真に自分と合一|致《な》し得た者を得た
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)残[#「残」に「ママ」の注記]しい尊さが
*:不明字 底本で「不明」としている文字
(例)穴*の彼方に
−−
桑野村にて
○日はうららかに輝いて居る。けれども、南風が激しく吹くので、耕地のかなたから、大波のように、樹木の頭がうねり渡った。何処かで障子のやぶれがビュー、ビュービューと、高く低くリズムをつけて鳴って居る。祖母が、因果なような音を立てて居ると云ったのが、いかにも適切な程、その音は、弱々しく陰気でありながら、絶え間ない執ねさで鳴って居る。
○地面と云う地面は到るところ、ゆるんでぬかって居る。
黄色な草の間を縫うて、まがりくねった里道には、馬のひづめのあとに轍が、一寸も喰い込んで、滅茶滅茶について居る。歩くのにも足駄でなければ、足の上の方までよごれる。
けれども村の者達は、此の困難な往還
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