その完全さがまるで異う。
ドストイェフスキーの調和、完全な美は、幾色もの完全な調和である。漱石氏のは、白と金の調和だ。二者の間には二つの国民性の差が著しくあらわれて居る。
飯坂に関して
○あの新道は、明治三十七年の戦争の始まるとき[#「明治三十七年の戦争の始まるとき」に「三月頃から四月ごろまで」の注記]に着手した。その年は饑饉だったので、貧民救済事業として行われたので、県庁の保助があった。女から子供まで。
人員 二三百人 ダイナマイトのきかない岩は何?
日数 二月位。
○崖中から水がたれて居る。
○岩の間に菫の小さい葉がしげり出して居る。
○桑の尺とり虫が出始め、道ばたに青草がしげり出し、くもが這いまわる。
○手品使の広告が通る。広い桜の生わった野道を、多勢の子供にぞろぞろとあとをつかれながら、赤いトルコ帽に、あさぎの服を着た楽隊を先頭にして、足に高い棒材でつぎ足しをし、顔を白粉や何で可笑しくそめた男が、ジョーカーのような帽子をかぶって、両手をはげしく振り、腰を曲げて調子をとりとりねって行く。子供達はきそって、躰が圧しつぶされそうなのぼりのさおをか
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