ですね」
 屑やのお父さんも賛成。
 タビやのお母さんは
「警察のうらだから工合がわるいと思う」
 行政学会
「今そんなことを云っているときでないでしょう 私はやすんで行きます」
「私はどこでも行って云うからいつでも」
 行政
「あした金曜だから土曜日だったら、一晩とまったっていいよ、みんな都合はどうだろうね」
「じゃ警察へ行くことは決定したんですね」
「ああ、そりゃ きまったんだ」
 あさってというのは 一月二十一日のレーニン・デーだときがつき ハッとする、
「二十一日なら私 となりのおかみさんもつれてゆくよ」
「じゃおかあさん工場どうします(タビ)」
「私もじゃやすむ」
 ――――
「工場がひけてからがいい」
「その時分じゃもうひけていないよ」
 行政学会が 九時に行こう、托児所(八時半)
 こんどは褓母がいっちゃいけない。みんなだけでゆこう。
 屑やのお父さんがこの前、褓母を迎えに行った。そして誰にそそのかされたかときかれたから

「行くときのことを話さない?」
 大崎の特高の入口はせまい。下でぐずぐずさせちゃいけない、
「誰かあすこ知っている人居ない?」
 裏から入ることにする、
 話すことをきめる。
  一、褓母を早くかえしてほしい
  一、托児所のところへスパイが来ておどしたり、ものをもって行ったりしてくれるな。
 みんな話について一人一人が自分についての実験
 屑やのお父さん おいて行ったら迷子になった、
 そのあと、おしるこなどをのんだ。

 二十日、平常のとおり
「おばさん、時間ちゃんとね」
「大丈夫だよ」
「あしたよろしくね」

 二十一日、雪もよいの寒い風の日
 六時半ごろから子供をあつめる。
 屑やのお父さんが自転車で七時ごろ来る、
「おじさんどうしたんです タクちゃんは?」
 引こしがあってその荷もつを
 八時半までにつれて来る
「小母さん、じゃ煉炭に当ってて下さい ひぐまいさんが来ればすっかりそろっちゃうから」
 行くというのが父母が十三人 みんな子供をつれて行くということ。
「キットスパイが来るから 私のうちに行ってろ」
「留守たのむよ」
 という。

「何だ 何だ 何だ、お前たち何だ デモか?」
 先ず入って行ったおっかさんの頬っぺたを打った。
 屑やのお父さんが
「デモじゃない、私たちはおねがいに来たんだ」

「何故あんなことをする
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