のか」
「あれは共産党だ」
「共産党って何ですか」
「共産党っていうのは××をたおして、国をやって行こうという つまりロシアのようなものさ」
「うちの赤坊なんかまだこんなで 赤だって黒だっていいよ、こういうのは托児所へあずけて居ない」
「お前一体なんだ?」
「私かい? 私はツナやだよ」
「つなやって何でい」
「ツナやも知らないバカヤロー、つなやってのはヨイトマケさ」
「托児所へあずけさせないんなら 私ァここへ子供をおいてくよ」
「お前たち子供が可愛くないか」
「可愛いからこそ五十銭なり一円なりをボーにしておねがいに来た」
「托児所は子供をわるくする、そんなに托児所がいるなら、自分たちでやれ。」
「だって金がないから、労救のようにやって貰う」
 デマをとばし
「総同盟のようなのならいい、あっちの人たちにやってもらえ」
 かえって「総同盟って何さ」と云う。

 九時から十一時までがんばり、行政学会のおかみさんにのこれと云う、七つの男の子をつれている。
「じゃ入ろう。坊や、じゃ二人で入ろうね」
「ウン」
 もう一人の若いお母さんは赤坊を背負っている。

 二十一日の朝 デモが出たあとへ文学新聞の人が来た。
 その人がかけて行って、警察へ入るのを見届けてかえって来て、
 一人のホボをつれて行っちまった。同時に文学新聞の二人、(地区の者です)つれてゆかれた。
 ――――――――――
 おっかさんの家で
 小学校三年生の男の子が様子を見てゆく。
「誰もいねえんだ」
 警察へ行って
「うちのかあちゃんや何かいない?」
「何だ子供のくせに! しばっちゃうぞ」
「何だ大根じゃあるまいし!」
 入って行って見ると総立ちに[#「総立ちに」に傍点]なっている。
「無駄だったよ」

 原っぱへ行こう、
 どこがいい
 真中がいいよ
 あしたっからどうする?
 私は褓母をさがし おっかさんがかわり番こに世話をすることにする。
 三月まで弾圧が来なかった。

 三月十一日に又三人やって来た。雪ふり。十四人子供がいた。デモにも行ったお母さん、笹井、私、労救の人。
「おやつの前で 今困るんですよ」
 二階からにげる
 〔欄外に〕新井光子はこの頃。

 二十日からいよいよひどい。
 四月一日――一杯新しい保母でやった。

 五月一日の日に 又つれて行ってしまう。
 品川労働者クラブの人を三人たのんでい
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