「女らしさ」とは
宮本百合子

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(例)[#地付き]〔一九四六年十一月〕
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 私たち婦人が「女らしい」とか「女らしくない」とかいう言葉で居心地わるい思いをしなくなるのはいつのことだろう。
 日本の社会も、袂で顔をかくして笑うのを女らしさといったり、大事な返事をしなければならないときに口もきけなくて畳をむしるのが娘らしいという考えかたからは、ぬけて来た。しかし、何かにつけて思い出したように「女らしさ」が登場して来る。そして、それはいつも、何かのかたちで婦人の生活が社会的に一歩前進する事情に面したときである。例えば、婦人に参政権が与えられたとき、あちこちに改めて「女らしさ」がとりあげられた。立候補した婦人たちは保守的な男女の一票をとり逃すまいとしてどんなに「女はどこまでも女らしく」と強調しただろう。はた目に気の毒なほど強調して「女こそ女の苦しみがわかるのだから」と演説した。そして、当選して、開院式の折、またその他の場合とかく「女らしく」衣服のことまで話題にされた。女らしさを標語にした婦人代
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