たちの生活を描いているとかいないとか批判するのは止めよう。積極的に、プロレタリア作家にとって或る場合必要なら師匠役となろう。作家は、草稿や筋を、先ず工場の一般集会でよめ。そして大衆の忠言や注意を利用しろ。文学的団体の間に行われる文学理論上の討論も、工場でやってくれ! こういう決議をした。
『文学新聞』にいろいろな工場連名でこの決議が載せられたとき、「鎌と鎚」工場はその先頭にたっていた。
 五箇年計画は、第一に重工業の生産拡大を眼目としている。「鎌と鎚」は全ソヴェト同盟内でも有数な金属工場だ。古いボルシェビキで、国内戦のときは、一方の指揮者となって戦ったプロレタリア作家タラソフ・ロディオーノフが、本気な顔をしているのは当然だ。
 次の研究会までに、各職場の文学委員が、各自何人の文学衝撃隊を組織出来るか報告することになって、作品研究にうつった。
 大抵の文学研究会では詩ばかり沢山よまれるのに、ここでは、縞フランネルの襯衣《シャツ》をカラーなしで着た青年が、短篇小説をよんだ。
 五箇年計画で、各生産部分には熟練工が足りなくなった。一九二八年には百十万人もあった失業者を全部吸収したが、それでも
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