》だけない。山羊皮の半外套を着た若い労働者が三四人、床の上でじかに膝を抱え、むき出しな板の羽目へよっかかっている。
四十がらみの、ルバーシカの上へ黒い上衣を着た男が立って報告しているところだ。
「タワーリシチ! われわれは工場新聞と各職場の壁新聞を動員して、少くとも九百人の文学衝撃隊《リト・ウダールニク》が集められるだろうと思う。
どんなことがあっても、それより少いことが、あっちゃならない。
われわれは、生産経済計画を百パーセントに充すとともに、文化戦線を閑却してはいけない。九千人の労働者から九百人の文学衝撃隊は、ちっとも多くないんだ。寧ろ少い!」
カサのない電球が天井から二箇所にぶら下って室内を照している。緊張した空気だ。
「職場における文学委員たちの任務は」
直ぐタラソフ・ロディオーノフが、党員らしいきっぱりした口調で坐ったまま始めた。
「これまでみたいに、自分一人手帖をゴチャゴチャ書きよごすことにはないんだ。タワーリシチ! 一般の自発力《イニチアチーブ》をひき出すことだ。壁新聞を、発行者たちの独専にしてはいけない。壁新聞を通じ、工場新聞を通じて、一般大衆の日常の闘争を、
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