とを意味するのだ。
労働者クラブは、現在ソヴェトに五六四〇〇ある。(五箇年計画は、その数を一二七〇〇〇にする。)
そのクラブで、ソヴェト勤労者は、政治教程、文学、劇、音楽、美術、ラジオ、科学、体育などの研究会をもち、大衆の中からの新鮮な創造力をもりたてている。
十月にはいると、モスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]は晩秋だ。
並木道《ブリ※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]ール》がすっかり黄色くなり、深く重りあった黄色い秋の木の葉のむこうに、それより更に黄色く塗られたロシア風の建物の前面が見える。よく驟雨が降った。並木道には水たまりが出来る。すぐあがった雨のあとは爽やかな青空だ。落葉のふきよせた水たまりに、逆さにその空がうつっている。――夕方、東京で云えば日本橋のようなクズニェツキー・モーストの安全地帯で電車を待った。
チン、チン、チン。
ベルを鳴らして疾走して来る電車はどれも満員だ。引け時だからたまらない。群衆をかきわけて飛び出した書類入鞄を抱え瘠せた赤髭の男が、雨外套の裾をひるがえして電車の踏段に片足かけ、必死になって
――入り給え! 入り給え!
とやっている
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