なたが働くと云えば、良人の方は家のことをしていろ! と云われるそうです。少しでもあなたが自分で金をとるようになると、思うままをするだろうと、それを嫌って止めろと云うのでしょうが、もしも今、目の前で良人が失業つづき、二人の子は育てねばならず、しかも家中売れるものは売りつくしてしまったという瀬戸際になった時、あなたが働くといっても、良人の方はやっぱり女は家にいろ、と云われるでしょうか?
本に書いてあるそのままの理屈で良人とケンカをせず、じわりじわり、良人の方が良人とし、父親とし、会社に雇われている身では今のブルジョアの世の中でどんな危い橋をその日その日とわたって頼りなくすごしているかを、目に見えるように納得させる方がいいと思います。あなたのお手紙に書かれたところだけで察しると、こういう大切な根気のいい働きかけがされたかどうかと考えられました。
ソヴェト同盟のような世の中になれば、まず失業はなくなる。万一失業があっても、国家は働く者同士でこしらえているから互に思いやりある組織で、キット失業保険がある。妻子があればその分だけ割増しがつく。六十歳までよく働けば養老保険さえ出るから、安心して職
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