一年つづくか二年つづくか当のつかない失業の間を、笑って暮していけるだけ、あなたの旦那さんは金持ちの方でしょうか。
若し、クビにされる心配は重役だからない。病気で半年休んでもおっかないことはない。クビにするならしろ、笑顔でクビにされてやるというブルジョアなら話は別ですが、あなたのお手紙が、ありふれたノートの紙をひきちぎった上に書かれているところを見れば、そういう方の妻とも思えません。
良人の方に、まず、何故この頃どの会社でも月給は上らず、手当は減り、しかも何ぞというとクビ、クビでおどすかという訳を、毎日の暮しの間に細かく説明して見せたら、どんなものでしょう。
万一クビになり、しかも良人が病気になりでもしたら、暮しは誰が保証してくれるか。搾るだけ搾られ、用がなくなれば、生きようが死のうが貴様の勝手と放り出されることは、工場の労働者だって、洋服をきた会社員だって同じことです。
大学まで卒業した人が三十五円四十円の月給さえナカナカとる口のない今の世の中に、会社が丸の内にあるばっかりに、俺は労働者なんぞとは人間が違うんだと、搾られている当人が思っているとしたらほんとに笑いものです。
あ
前へ
次へ
全18ページ中7ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング