編輯は日本プロレタリア文化連盟に加盟しているいろいろの文化団体からの代表があつまってされているのです。『働く婦人』だけの事務所というものは、ですからありません。出版所の中でひっくるめて、いろいろの仕事がされているのでして、今さし当り、人手は不要な有様です。
 すぐ『働く婦人』の事務のために働いていただくことはこういう次第で出来ませんが、お話の様子ではあなたは『働く婦人』を毎号お読みのようですから、先ず、直接購読者となり、追々『働く婦人』を中心としたサークルをこしらえて行ったら実にいいと思います。(サークルについては三月号附録をよんで下さい)また、あなたが働いていられるところで見聞きするいろいろの出来事とか、友達に『働く婦人』を見せたら何と云ったとかいう一寸見ると小さいようなことでも、どんどん『働く婦人』に投書するようにして下さい。そして、段々長い通信も送れるようになり、『働く婦人』の通信員となれれば、お互にどんなに助け合えるでしょう!
『働く婦人』を支持するのは、決して、そこの事務所で働くということだけに限られていません。
 それどころか、一人でも多く直接購読者をつくり、通信を送り、サークルをこしらえて行くことこそ、実にわれわれの大切な雑誌『働く婦人』を守り、育て、強固な皆の役に立つものにしてゆく方法なのです。
 どうぞこのことを理解し、猶一層『働く婦人』を支持して下さい。われわれの婦人雑誌はただ一つ『働く婦人』があるぎりです。

        就職のことその他

 今月号『働く婦人』の巻頭の檄にあるとおり、つい先頃、日本プロレタリア文化連盟に加えられた理由のない弾圧のため『働く婦人』直接購読者の一部に被害があるらしいことを非常に心配しているところなので、あなたのお手紙は特別注意をひきました。全くあなたの手紙の通りです。どんな場合にでも私たちはただ一人では弱い。しかし同じ目的に向って進む階級としてかたまれば実につよい。団結の力はどんなに強いものかということをブルジョア・地主は知っているからこそ、たとえば文化サークルのように何でもないものまで当局は、ただそれを中心に大衆が集るというだけで、もうとやかく干渉するのです。過去の経験を、現在あなたが『働く婦人』の直接購読者としてどんなに活かしていられるでしょうか。そのことを、私たちは知りたいと思います。先の経験で一人ぽっちでは弱いということをつくづく知られたらしいが、『働く婦人』を中心として現在ではサークルでも組織していられますか? 何人かがかたまって集団的に取次者をきめて直接購読をしていられますか? 若しまだでしたら、価値ある経験をすぐ今日の実際の中に生かしてゆかれることを希望します。ブルジョア・地主の政府が資本主義経済の行きづまりから死物狂いにファッショ化して来ている現在の日本で、プロレタリアの唯一の文化的武器である、プロレタリア出版物を支持し、その配布組織を敵から守って拡大強化してゆくことはわれわれに課せられて決してなおざりに出来ない階級的任務なのです。
 文化連盟及『働く婦人』の基金募集応募のことは異議あろう筈はありません。例えば、『働く婦人』にしろ、実に困難な経済の中から苦心して発行しているのです。あなたがまとまって寄附なさることが出来れば幸いです。その他あなたのお友達の中で、よしんば纏《まとま》った額を一時に応募することは出来ないにしろ、毎月一円ずつぐらいなら出せるという方でもあれば、すすんで『働く婦人』の維持員になるよう勧誘して下さい。維持員にはなれないが半年分誌代前納で直接購読ならしようという方があれば、これも大切な支持者です。いつも、われわれはその額の多少によらず心からわれわれの出版物を守ろうとしてされる経済的援助を歓迎します。
 さて、就職の件ですが、お手紙に書かれていただけでは、あなたの親が就職そのものについてどんな意見をもっていられるのかはっきりしません。然し、自身技術をもっていて就職を望んでいるとしたら、適当な就職口を見つけて働き、集団の生活を知り、働く婦人としてどう搾取者と闘って行くべきかという訓練を受けるのはいいでしょう。われわれはブルジョア社会で搾られる働く婦人として官僚主義、差別待遇等に対しどこまでも闘って行くべきです。あなたはそれらに対し「随分反抗しつづけて来ましたがこの位のことが何でしょう」と云っていられるが、それはその時代の反抗が個人的に一人対一人として、組織の力によってではなくされたので、そういう心持を今あなたに起させているのだと信じます。あなたが団結の必要を知ったということは、即ちプロレタリアートを解放し、真に婦人の生活を幸福にするための闘争には強いプロレタリアートの組織がいるということを意味しているのです。今度就職したら、職場のみんなの不
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