「下じき」の問題
――こんにちの文学への疑い――
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)市民《ブルジョア》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)尾※[#「骨+(低−にんべん)」、第3水準1−94−21]骨
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 いたるところで、現代文学の停滞が意識され、語られている。
 この問題が「小説の運命」という風な題目によってとりあげられはじめたのは、きのう、きょうのことではなかった。二三年前からのことでもない。さかのぼれば、一九一七、八年という時代に問題の源が発している。第一次大戦の末期からその後にかけて市民《ブルジョア》の文学としての近代文学のうみてである中間層の社会生活は、激動をうけた。その市民としての生活感情が変化したにつれて、文学の精神も表現も、それまでの様相をかえた。
 第二次大戦は、更に大規模な破壊と変貌とを地球の上にひきおこした。世界の文学には、第一次大戦ののちとは比較にならない根本的な変化がもたらされつつある。第一次大戦の後、世界の市
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