民《ブルジョア》文学の変化は、最もはげしく中間層の生活が破壊されたドイツの社会的要因の上に展開された。同時に、世界文学は、はじめて労働者階級の文学(プロレタリア文学)の誕生を迎えた。ソヴェト同盟の革命的な文学は、世界文学が包括するヒューマニティーの内容に、はっきりと、現代の歴史における労働者階級の意義と新しい能力の実証を加えたのであった。
 第二次大戦は、ナチス・ドイツとファシズム・イタリー、日本の敗北を結果した。あやまった指導力に自分たちの運命をまかせたこれらの民族は、ドイツ人民がその悲惨において示しているように、きょうの世界文学の上に、自分たちのおそろしい経験を、人類の最後の悪夢たるべき経験として物語る余力がないまでに挫折させられた。
 ソヴェト同盟の文学とアメリカ文学、そしてフランスの文学が、こんにち、ヨーロッパの側で世界文学の運動を示す三つの星となったには、世界史の裏づけがある。アジアの文学は、パール・バックやエドガー・スノウやオーエン・ラティモアなどの優秀な西欧の人間性を通じて世界文学に座をつらねる段階をぬけて来ている。中国は中国の人々自身の物語をかたりはじめた。インドも、朝
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