故みっともない真似をするんです? また、嫉妬してる。あなたは私が誰かと話してるのを平気で見ていられないの?」
 ドミトリーは、インガがいくら説明しても二言目には、「俺はああいう風な教育はないんだ」と云う。
「我慢がならないんだ。――お前が誰かほかの者と……俺あ知ってる、野蛮だとお前が云うのを。だが、俺はそれほどお前を愛してるんだ。」
「ドミトリー。考えて見なさい。私はあなたより潔癖よ。あなたのところへ自分から行ったのよ。あなたと一緒になるために――あなたとだけ一緒になるために。それだのに、あなたは私を繩でしばりつけたがっている――」
 自分との同棲者でなかった間、ドミトリーはインガの才能を理解していたらしかった。然し今は、インガも彼と同じく建設の闘士であると思うことが、彼には出来ない。
 わるいことは、ドミトリーに、自分を持ち上げようとする本気な努力がないことだ。インガは、彼よりも社会的には大きい存在である。そのインガと暮すには、彼自身伸び育たなければならない。そこに、インガがドミトリーと暮している階級的な値うちもある筈だった。――インガは彼女のよいもちものをドミトリーに、ドミトリーは
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