「ラジオ黄金時代」の底潮
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)五月蠅《うるさ》さ

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「さんずい+墨」、第3水準1−87−25]東綺譚
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 現代ヨーロッパ文学には、ラジオや飛行機が様々の形でとりいれられ、スピードや空間の征服やそれによる人間の心理の複雑化などが語られている。
 日本でもラジオは文学に反映しているが、最近東朝が紙面の品位を害する[#「紙面の品位を害する」に傍点]という理由で掲載を打ちきったとつたえられる永井荷風氏の「※[#「さんずい+墨」、第3水準1−87−25]東綺譚」は、恐らく今日の世界の文学に類のないラジオと一人の人間との関係を発端としていると思う。作者永井荷風は、夏の夕方になると軒並にラウド・スピイカアのスウィッチを入れて、俗悪・卑雑な騒ぎを放散させる五月蠅《うるさ》さに堪りかねて、丁度十時頃ラジオの終るまでの時刻をどこかラジオのならないところで過す工夫をこらす。そして、遂に墨東
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