したにすぎないことを申し上げれば、この馬の罪もいく分軽くなるわけでしょう。ところでベルが鳴り出しました。今度の競馬で私は少し勝ちたいと思いますから、その説明はいずれ後でゆっくりと委しく申し上げることにしましょう」

 その晩、ロンドンへの帰りを、私達は寝台車の一隅に席を占めたが、前週の月曜日にダートムアの競馬場で起った出来事を、順序を追ってホームズは話し、そしていかにしてそれを解決するに至ったかを語り聞かせてくれたから、汽車の無聊を感じるどころか、ロス大佐にしても私にしても時間のたつのを知らなかったくらいである。
「実のところ、新聞の報道を根拠に組立てた私の意見は全然誤っていました。しかも、新聞の記事にも正しい暗示の出ていたことは出ていたのですが、いろんな他の事項のためにそれがかくされていたのです。デヴォンシャへ行くまでは、フィツロイ・シムソンが真犯人だと私は信じていました。もっとも彼に対する証拠は完全だとはむろん考えていませんでしたけれど。
 ところが、いよいよ馬車でストレーカの家に着いた時に、ふと羊のカレー料理が非常に重要な意味を持っていることに気がつきました。あの時、私がぼんやり
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