い調子です。あなたの手腕を疑ぐったりして、なんと謝罪していいか分りません。こうして大切な馬を取戻して下すったのですから、この上はジョン・ストレーカ殺しの犯人を見つけて下されば、これに越す幸いはありません」
「加害者も捕えておきました」
 ホームズはすましていった。
 大佐は無論、私までも驚いて彼の顔を眺めやった。
「えッ! 捕まったって? どこにいます? それでは?」
「ここにいます」
「ここに? どこです?」
「今現に我々と一緒にいます」
 大佐はこの一語にカッとなって、
「ホームズさん、あなたのおかげを受けてることは十分認めもし、感謝もしていますが、只今のお言葉は冗談にしては少し重すぎはしませんか。あなたは私を侮辱しますか!」
 ホームズは笑っていった。
「大佐、あなたを何も犯人だと申したのではありませんよ。真犯人はあなたのすぐ後に立っていますよ」
 ロス大佐は進みよって、名馬の沢《つや》やかな額に手をかけたが、急に気がついて、
「馬がッ!」
 と叫んだ。私も同時に叫んだ。
「そうです、馬がです。ジョン・ストレーカは全然あなたの信頼するに足りない男であります、馬は正当防禦のために殺
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