ープ[#「プ」は底本では「ブ」]ルトンの黄色がその中の先頭を切っていたが、私達の前まで来た時はデスボロは力つきて出足鈍り、大佐の馬は突進してそれを抜き、決勝点に入った時は、優に六馬身の差があった。バルモーラル公のアイリス号はずっとおくれて三着になった。
「とにかく、勝《かつ》には勝った」
 大佐はホッとして、手で両眼《りょうがん》を拭き払いながら、
「しかし、正直なところ私には何が何んだかさっぱり分りません。ホームズさん、もういい加減に教えて下すってもよくはありませんか」
「申し上げましょう。何もかも申し上げましょう。みんなであっちへ行って馬を見てやりましょう。ここにいますよ」
 ホームズは馬主とその連れだけしか入《い》れない重量検査所へ入って行きながら、
「この馬の顔と脚とをアルコールで洗っておやりなさい。そうすればもとのままの白銀だということが分りますから」
「えッ! これあ驚きましたな!」
「あるいかさま師の手に入っていたのを見つけ出して、勝手ながらその時のままの姿で出場させたわけです」
「どうもあなたの慧眼は驚くべきものです。馬は非常に調子がいいようです。全く今までになかったい
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