! 場《じょう》に出れば五対四!」
「ぞろぞろ出て行くぜ」
 私が注意をした。
「ああ、六頭全部いる!」
「六頭全部だ! してみると私の馬もいるんだな!」
 大佐は叫び声を挙げた。
「だが、白銀はいない! 黒帽赤|短衣《ジャケツ》はここを通らなかった」
「いや、まだ五頭通っただけです。今度のがそうに違いありません」
 私がこういった時、逞ましい栗毛の逸物が重量検査所から出て来て、ゆるやかな駈足で私達の前を通った。鞍上《くらうえ》にはロス大佐の色別《しきべつ》として有名な黒と赤との騎手が乗っていた。
「あれは私の馬じゃない!」
 持主の大佐は叫んだ。
「あいつには額に白い毛がない! ホームズさん、あんたは一体何をやったんですッ?」
「まあ、まあ、あの馬がどんなことになるか見ていましょう」
 ホームズは騒がずにいって私の双眼鏡をとってしばらく一心に眺めていたが、
「見事だ! 素晴らしいスタートだ! や、や、来たぞ! コーナを廻って来たぞ!」
 馬車の上から見ていると、やがて直線部に来た時の彼等は壮大であった。六頭の馬は一枚の敷物でかくせるくらい接近して馳《かけ》っていた。が、半ば頃まではケ
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