と、あの朝も早く起きてみると、荒地によその馬がうろうろしているので、出て行ってみたところ驚いたことには、それが白銀号だった――白銀というのは額が真白なところから出た名なんだが、自分が大金を賭けてる馬の唯一の強敵が手に入ったんでびっくりしただろうと、そのことについて委しく話してやった。最初は、キングス・パイランドへつれて行こうとしたが、急に魔がさして、競馬のすむまでかくしておいたらという考えを起し、そっとケープルトンへつれ戻ってかくしておいただろうといってやったもんだから、あいつもとうとう降参して、どうかして自分が罰せられないですむ方法はないかと考えるまでになったんだ」
「だって、あの厩舎はグレゴリ警部が調べたんだろう?」
「馬の扱いもあいつぐらいになると、どうにでもぺてんの利くもんだよ」
「だって君は、ブラウンに馬を預けておいて心配はないのかい? あの馬に傷をつければ、どの点から見てもブラウンの利益になるんだのに」
「安心したまえ。ブラウンは掌中の玉のように馬を大切にするから。少しでも罪を軽くしてもらうには馬を安全にしておくのが、唯一の方法だと、ちゃんと心得ているんだ」
「だが、ロス大
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