らいましょうか」
ホームズはニヤリとして、
「ワトソン君、ほんの二三分間で出て来るからね。じゃブラウンさん、お言葉に従って中へ入れてもらいましょうか」
二三分間といったのが、きっかり二十分はかかった。ホームズがブラウンとつれ立って出て来た時には、夕映《ゆうばえ》は消え去って、四辺《あたり》は灰色の黄昏が迫りかけていた。たった二十分の間に、サイラス・ブラウンの変りようったらなかった。顔の色といったら灰のように蒼ざめ、額には汗の玉を浮べ、手に持つ猟鞭は嵐の中の小枝のようにゆらいでいた。そして横暴で尊大なさっきの態度はどこへやら、まるで主人に仕える忠実な犬のように、ホームズの側でかしこまっている有様だった。
「それではお指図の通りに致します。必ず致しますから」
「必ず間違わないようにしてもらいたい」
ホームズはブラウンをじろじろ眺めながらいった。
ブラウンはホームズの視線に威圧されて、ぱちぱちと瞬きをした。
「はいはい、決して間違いは致しません。必ず出します。それからあれは初めから変えておきましょうか、それともまた――」
ホームズはちょっと考えていたが、急に噴き出して、
「いや、そ
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