・ダービシャ宛に出した、合計三十七ポンド十五シルの勘定書です。ストレーカの妻君の話によれば、ダーヴィシャというのは夫の友達で、ここへもちょいちょいダーヴィシャ宛に手紙が来たということです」
「ダーヴィシャ夫人の帽子だとすると、夫人はなかなか贅沢家だな」
と、ホームズは勘定書を眺めながらいった。
「一枚の着物に二十二ギンもかけるとは、ちと奢りすぎる。しかし、これでここはもう済んだようですから、今度は兇行の現場を見せてもらいましょうか」
居間からどやどやと出て行くと、廊下に一人の婦人が待ち構えていたのがつかつかと進んで来てグレゴリ警部の腕に手をかけた。憔悴し切った顔に焦慮しているらしい胸の中《うち》をそのまま現わして、まだおどおどと恐ろしそうにしている。
「あの、捕まったんですか?」
「いや、まだですよ奥さん。しかし、このホームズさんがロンドンからわざわざ加勢に来て下さいましたから、一同で出来るだけはやってみるつもりです」
「ああ、あなたにはいつぞやプリマスで園遊会の時お目にかかりましたね、ストレーカさん」
と、ホームズはいった。
「さあ、いいえ、それは何かのお間違いでございましょう
前へ
次へ
全53ページ中25ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三上 於菟吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング